草 木 染 
Plants dyeing

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草 木 染 と 大 原 の 夏 2003
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 毎年、夏が来ると私は大原へ行く。この習慣は今年でもう8年目、回数にして7回目
になる。京都の中心部から大原まではバスや電車を利用して約一時間かかる。ちょっと
した遠足気分といった距離だが、私は必ず大原で一泊(もしくは二泊)することにして
いる。すると、遠足はちょっとした旅になる。

 大原で私が必ず訪れる場所……というより、そこへ行くために大原へ来ているのだが
それは大原工房である。大原工房との出逢いは私が高校生だった頃にさかのぼる。美術
部の夏の合宿で、私は初めてここに訪れた。長靴を履き、エプロンをして、最初は畑で
草木の話を聞いた。畑には、草木染のもととなる藍や茜が風に揺れていた。自然の色の
持つ意味、特性などについて触れられる瞬間。大原工房では草木染の一日講習から染色
や織物による作品の販売まで、幅広く、楽しむことができる。

 草木染の講習は畑の草木の話から始り、採収、下準備などをして、大きな鍋で料理を
するように小さく切った草木を炊き出す。沸騰して30分以上たったら炊き出しは終了、
これが草木染のもととなる染液になる。炊き出した染液は冷めてから使用する。

 染める素材は自分で用意しても良し、工房でスカーフやマフラー、暖簾、Tシャツ、
ハンカチなど多種多様な素材を選ぶのも良し、「あとで使う」という喜び、人にプレゼ
ントしようという喜び、草木染の楽しみはもうここから始っている。素材は主に、シル
ク、綿、麻で作られたものが適当である。

 染液はすでに出来上がっているものも多く蓄えられており、それを鍋に注ぎ、いよい
よ草木染がスタートする。素材は前もって、お湯につけて、糊や汚れを落としておく。
鍋に素材を入れ加温し、泳がせるように5〜10分、染める。そして、ざっと水洗いし、
媒染を行なう。ミョウバン、又は鉄分を溶かしたぬるま湯で10〜20分、媒染をする。
ミョウバン媒染につけた素材は明るく発色し、鉄媒染につけた素材は暗く(黒く)発色
する。媒染が終わったら、また水洗いし染液に戻しまぜながら100℃まで上げる。それ
からゆっくり冷まし、よく洗う。この工程をくり返すことで色はより深く染まることに
なる。

 また、染色はこの他に、型染めや素材を絞ったり縫ったりすることで、様々な模様や
形を作り出すこともできる。藍の葉を直接、シルクの素材にたたきつける方法や、紅葉
などの葉を素材に貼り柿渋を塗る方法を用いて、葉の形の美しさを見せるなど、面白さ
の幅は実に広い。

 大原の自然と爽やかな気候の中、草木染をする時間は疲れた背中を癒してくれる。持
ち帰った暖簾が強い残暑の日を抑え、草木染のマフラーで冬を越す。そしてまた、来年
「行こう」と思うのである。
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